NEWS&TOPICS

新着情報

2026年02月23日

【Weekly No.522】米最高裁がトランプ関税無効判断、市場への影響は?

期間限定で、パスワード不要で全文お読み頂けます。

■■------------------------------------------------------------------------------------------------■■

  1. 米最高裁がトランプ関税無効判断、市場への影響は?
  2. 【トランプ氏、世界的に10%の関税賦課と表明-最高裁の無効判断を受け】
  3. 【日本株に高値警戒感、数年先の増益・成長を織り込んでいるとの指摘も】

■■-----------------------------------------------------------------------------------------------■■

Weekly223

【米最高裁がトランプ関税無効判断、市場への影響は?】

米連邦最高裁は20日、トランプ大統領が打ち出した大規模な関税措置について効力を認めないとの判断を下した。トランプ氏にとっては看板政策の根拠が否定された形で、政権復帰後、司法面での最大の敗北となった。

不確実性の局面に入ったと覚悟した方がよい。数週間内に代わりの関税措置について詳細が明らかになるだろう。連邦準備制度理事会(FRB)当局者の多くが金利据え置きを望んでいるのは、これも理由の一つだ。

この日の最高裁判断は市場参加者の間で広く想定されていたため、米金利市場への反応が限定的なのは驚きではない。ホワイトハウスは関税を押し通す別の方法を見いだすと見込まれてはいるが、その間の返金を巡る懸念が生じる。米国の財政状況が既に弱いこともあり、その懸念が米国債市場を不安にさせ、ドルが動揺する恐れもある。

これまでのところ、市場の反応はかなり穏やかだ。市場はどう対応すべきかを判断しかねている。最大の争点は、(関税収入が)払い戻されるかどうかに判断が出るかどうかだった。  

今回の判断は短期的には財政にマイナスであり、米国債にとっては弱気材料になるはずだ。ただ、実際にどのように機能するのか見通すのは極めて難しい。非常に複雑だ。

市場は関税の巻き戻しを短期的にはポジティブと捉えるだろう。サプライチェーンの負担が即座に取り除かれ、懸念要因が一つ消えるからだ。しかし関税物語はこれで終わったのではなく、新たな一章が始まった。ここから先は、法的・政策面での揺さぶりが小さくなるどころか、むしろ一段と大きくなる可能性が高い。

最高裁判断による安心感は、主に不確実性の低下を通じ、リスク資産に一時的にプラスに作用するだろう。政権は他の法令を通じて大幅な関税設定権限を持っているが、その一部は前例がなく、発動までに時間を要するものもある。政権が他の手段で大半の関税を代替するとの見通しは変わらないが、これは中期的な動きだ。

一方、払い戻し手続きは非常に複雑になり、短期的に成長や消費を大きく押し上げる可能性は低いとみている。これがドル相場のトレンドをいずれの方向にも転換させるとは考えにくい。市場は、経済と労働市場の回復を示す新たなデータに焦点を戻すだろう。米連邦準備制度理事会(FRB)は当面様子見の姿勢を維持し、ドルのさらなる下落は限定的になると考えられる。

1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくトランプ氏の関税が維持されるとの見方を維持していたのは政権だけのようだ。今回の判断は、トランプ政権が国・地域別やセクター別の関税に軸足を移すことを意味する。これらは発動までに時間がかかる。

 

【トランプ氏、世界的に10%の関税賦課と表明-最高裁の無効判断を受け】

トランプ米大統領は20日、世界的に10%の関税を課す大統領令に署名する方針を示した。同氏が昨年導入した関税措置の大部分について、連邦最高裁が無効と判断したことを受けて表明した。さらなる関税発動を可能にする一連の調査を実施する方針も示した。

トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、「最高裁は1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいた関税措置を退けただけで、関税そのものを覆したわけではない」と発言。「これからは別の方向に進む。恐らく最初からそうすべきだった」と続けた。

トランプ氏は、1974年通商法122条に基づいて一律関税を発動する考えを示した。通商法122条は、大統領に「国際収支の根本的な問題」に対処するため関税を課す権限を与えている。ただ、これまで適用された例はなく、関税率は最大15%に制限され、適用期間は最長150日までとなっている。トランプ氏は、新たな一律税率は「3日後に」発効するとの見通しを示した。

また同氏は、通商法301条や通商拡大法232条に基づく追加調査を開始する考えを示した。これらの法的規定はこれまで、中国からの輸出品のほか、自動車や金属製品に関税を課す際に用いられてきた。

トランプ氏は、10%の一律関税が適用されている間に調査を進め、最終的にはそれに置き換える可能性があるとの考えを示した。また、外国製自動車に対する15-30%の関税を課すことを検討しているとも述べた。

トランプ大統領は発言の冒頭で連邦最高裁を激しく批判し、「一部の判事を恥じている」と述べるとともに、「率直に言って、わが国にとって恥ずべき存在だ」と非難した。

最高裁はこの日、トランプ氏が打ち出した大規模な関税措置について効力を認めないとの判断を下した。最高裁は、トランプ氏が1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて各国・地域に関税を課したことや、合成麻薬フェンタニルの米国流入対策として輸入関税を発動したことは大統領権限の逸脱に当たると判断した。判決は63だった。

多数派にはロバーツ長官と3人のリベラル派判事のほか、トランプ氏が指名したゴーサッチ判事とバレット判事も加わった。一方、カバノー、トーマス、アリートの各判事は無効との判断に反対した。

最高裁は、輸入業者がどの程度の還付を受けられるかについては判断を示さず、この問題については下級審に委ねた。還付が全面的に認められた場合、総額は最大1700億ドル(約263500億円)に上り、これらの関税に伴う歳入の半分余りに相当する可能性がある。

関税の還付方法を具体的に示さなかった最高裁の判断にもトランプ氏はいら立ちを示し、「この先5年間は法廷で争うことになるだろう」と述べた。

トランプ氏は、自身の関税政策は製造業を米国に呼び戻すためだけでなく、外交政策上の手段としても不可欠だと主張。関税をちらつかせることで、各国に武力衝突の緊張緩和を迫ることができたと述べ、関税を巡る交渉が多額の対米投資計画を呼び込んだとの認識を示した。

関税を交渉材料として用いながら、今後も貿易交渉を進めていく考えを示すとともに、既存の合意は維持されるとの見通しを示した。

今回の最高裁判断は、24日の一般教書演説に向けた緊張感をさらに高めるものだ。

 

【日本株に高値警戒感、数年先の増益・成長を織り込んでいるとの指摘も】

株価は既に2年先までの増益織り込み、移動平均からのかい離も顕著衆議院選挙を受けて史上最高値更新まで急上昇した日本株は、バリュエーション(投資尺度)が歴史的な高水準に達している。市場に広がる強気ムードに対して短期的な上昇余地は限定的と投資家は警戒している。

株価を1株当たり予想純利益(EPS)で割った予想株価収益率(PER)は東証株価指数(TOPIX)で18倍に迫る。新型コロナウイルス禍や世界金融危機といった異常時を除くと2007年以来の高水準だ。TOPIXの目標水準を引き上げたストラテジストは、こうした高いバリュエーションが続くという前提に立っている。

発表が先週一巡した2510-12月期の企業決算はおおむね良好とはいえ、現時点で市場関係者は26年度で10%前後の増益を想定している。「TOPIX26年度どころか、27年度業績予想まで織り込まないと説明できない水準まで上昇している」とみずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは指摘する。PER27EPS16倍超と従来のレンジ12-16倍を上回る。

こうした割高感はテクノロジー関連株の比重が高い日経平均株価ではさらに顕著だ。日経平均の予想PER24.3倍と、高い成長期待から世界の主要株価指数の中で最もバリュエーションが高いナスダック総合指数の24.9倍とほぼ並ぶ水準にまで上昇した。

衆議院選挙での自民党の圧勝を受け、過去に選挙で大勝した後に海外投資家の日本株買いが増えた経験則から、海外投資家の日本株買いへの期待感が市場では強まっている。特にグローバルな投資家の間では、米国に集中している投資先を多様化する際の受け皿として、比較的市場規模の大きい日本株が注目されている。

各社はすべて日本株の見通しを上方修正した。その前提は高バリュエーションの継続だ。

ゴールドマンは、当時の小泉純一郎首相が05年のいわゆる郵政解散後の選挙で大勝した後につけたTOPIX予想PERのピーク19倍を念頭に、予想PER18.9倍まで拡大すると予想、TOPIXは半年後に4400まで上昇するとの見通しを示した。

目標株価を引き上げたモルガン・スタンレーとJPモルガンは、いずれも前提となる予想PER17倍だ。

もちろん、日本経済がデフレ基調からインフレ基調に移行したとみられる現在、過去の基準を当てはめる必要はなく、コーポレートガバナンス(企業統治)改革に伴う株主還元強化や利益率改善を考慮すれば現在の株価収益率は必ずしも割高とはいえない、という議論はある。

同時にそれを差し引いても、日本株には短期的に過熱のサインが増えている。TOPIXの水準は200日移動平均線を21%も上回る。過去には移動平均を15%上回ると相場が調整していることが多いことから、すでに危険水域といえる。

株式時価総額と国内総生産(GDP)との対比でも株価の割高感は目立つ。東証プライム市場の時価総額は先日1300兆円を突破し、10-12月期の名目GDP669兆円の2倍に近い水準にまで膨れ上がっている。過去の名目GDPと株価の時価総額の回帰分析に基づくと、現在の株価と整合的な名目GDPの水準は720兆円前後で、市場は3年程度先までの経済成長を織り込んでしまっている、と分析。バブルであるとか、市場が大崩れするとは思わないが、少しスピード違反で巡航速度までの調整はあり得る。