2025年12月05日
【MONTHLY No.045】台湾有事発言での中国の対日制裁は、高市政権と日本株高に
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- 【台湾有事発言での中国の対日制裁は、高市政権と日本株高に】
- 【対中封じ込め緒戦、中国は欧米を屈服させた】
- 【国家安全保障、対中デカップリングに邁進する西側先進国】
- 【凋落するリベラル・日本へのサプライチェーン回帰】
- 【消費牽引の潜在成長率の押上げと株高】
- 【米国例外主義は続く】
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マンスリー12月号
高市首相の台湾有事発言で断然日本株優位に
高市首相の国会答弁を機に中国の対日批判は沸点を超えてしまった。これまでの日本はあいまい戦略により「台湾問題は中国の内政問題、日本は介入すべきでない」と中国側の主張に異に唱えてこなかった。(12月1日、文責太田)
【台湾有事発言での中国の対日制裁は、高市政権と日本株高に】
高市首相の国会答弁を機に中国の対日批判は沸点を超えてしまった。これまで日本は曖昧な戦略により、「台湾有事は中国の内政問題、日本は介入すべきでない」と言う中国側の主張に真っ向から異を唱えてこなかった(中国は勝手にそれを既成事実とみなしてきた)。しかし高市首相の答弁をきっかけに、「台湾有事は日本有事、日本も軍事行動が必要になる可能も」との解釈が浮上し、日本が対中対抗のレベルを引き上げたと受け止められた。中国は首相答弁の撤回か(日本が台湾有事に介入しないとの確約か)、日中敵対かの踏み絵を求めているが、日本に前者の選択肢はなく、日中対立は深刻化の度を増すだろう。
中国の対日批判は粗暴であり度を超えている。①セツケン大阪総領事のXへ投稿「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」②高市発言撤回要求、③日本へ渡航注意のもとの解釈が浮上した。さらに、④日本への留学を慎重にするべきと言う勧告、⑤G20での日中首脳会談の拒否(?) ⑥尖閣周辺日本領海域への船舶侵入、⑦日本映画の公開見送り、⑧日本からの海産物輸入の禁止、⑨国連での対日非難) 等々。
当初、メディアも反高市にあったが、12月1日の日経新聞にテレビ東京との28日~30日までの世論調査で、若い世代の55%は、台湾有事の答弁は「適切」と答えており、メディアの世論との乖離が目立った。日本側で対中姿勢のレベルが変化しているのだとすれば、中国が過剰反応するのも分からなくはない。
【対中封じ込め緒戦、中国は欧米を屈服させた】
対中国対立のレベルは米国・欧州でも引き上げられてきた。米国では様々な制裁とトランプ関税、欧州でも対中政策に関する列国議会連盟(Inter-Parliamentary Alliance on ChinA(IAC)の運動、対中通商制裁や、オランダ政府による中国半導体企業ネクスペリアのオランダでの経営権接収、欧州における台湾への接近などがある。英国ではロンドン中心部欧州最大規模の中国大使館建設画を「中国の諜報(ちょうほう)活動の拠点になる」との懸念から建設承認を先送りしてきた。
「売られたけんか」に応えるべく、中国は日本に対しては理不尽ともとれる批判・制裁を強め、対米ではレアアース(中国が世界シェア9割を握る)の供給を停止し(のちに解消)、対欧州では自動車用半導体の中国工場からの出荷を停止した。ハイテクや自動車の生産が止まる事態に追い込まれて、米国トランプ政権は関税の引き上げを撤回し一年間のレアアース供給を確保した。オランダ政府もネクスペリアの経営権接収を棚上げすることで、半導体供給を確保した。英国も大使館建設を承認した。
【国家安全保障、対中デカップリングに邁進する西側先進国】
このように中国抑制戦の緒戦は、中国の供給停止の脅しに耐えられず、西側諸国は対中圧力の撤回を余儀なくされた。しかし、中国による重要物資・財の供給停止は、かえってすべての西側諸国に対中デカップリングが国家安全保障に直結する焦眉の課題であることを思い知らせたはずである。世界工業生産に占める中国シェアは国連調査で3割強と著しく高く、西側各国は経済安全保障の危機に直面している。レアアース、半導体等クリティカル物資の中国依存脱却のために、政府資金投入、通商規制、市場への介入など各国こぞって政策総動員が一段と強まるだろう。何年かかけて国際分業の大きな変化が実現するに違いない。
【凋落するリベラル・日本へのサプライチェーン回帰】
日本では、前述した様にリベラル勢力(一部政党やメディア、オピニオンリーダー)は国民の支持を失いつつある。WSJ誌は「中国が日本にケンカを売る理由は高市首相を弱体化させることだ」と観測しているが(11/18)、それは全くの逆効果である。中国は日本の友を失い、望まない高市氏の政治基盤を強めていくことは確実。
石破政権までの自公連立政権は、憲法改正やスパイ防止法、防衛力増強などを後回しにしてLGBT法や選択的夫婦別姓などリベラル政策と、財政健全化路線を柱とするリベラル中道連合であり対中宥和的であった。これに対して高市政権下での自民維新の新連立は保守連合(改憲、自主防衛、積極財政)と言え、対中現実主義である。公明の連立離脱は、高市氏率いる自民党の路線大転換を見越してなされたものであり、平和主義に徹する公明党にとって、他の選択肢はなかったと言える。しかし新政権は選挙の洗礼を経ておらず国民の信任を得たとは言えない。これほどの路線転換が永田町内の論理で成された以上、国民の審判を受けるべきという世論は高まる。高市首相は積極財政とともに、国家安全保障戦略を争点に押し立てて、解散総選挙に打って出るであろう。選挙では対中宥和を唱えるリベラル勢力が敗れ、日本の政策軸が保守・ナショナリズムと積極財政に傾く可能性が強い。
【消費牽引の潜在成長率の押上げと株高】
積極財政と日本への生産回帰は潜在成長率を押上げ、日本経済を復活させ、更なる株高に結び付く可能性が強い。年末高値圏で波乱色を強めている日本株は来年年初~前半の政局への、変化を経て、再度大幅上昇軌道に復帰する可能性が高いと考える。中国による日本への渡航制限などが日本経済に与える影響はごく限定的。むしろ日本で中国からの輸入減、生産の国内回帰が進むことは、日本経済にプラスになる。90年代からの日本の長期凋落は中国・韓国・台湾への、技術・工場など生産基盤の漏出によって起こった。今その逆回転が始まっているのだから、時代の風は、日本に追い風になっているのだ。
世界の潮流は明らかに変わりつつある。きっかけはトランプ政権の誕生で米国の、自由競争中心のリベラリズムの崩壊だ。世界的なリベラリズムは1990年に始まった。その時代に世界経済の自由化で利益を得てきたのが中国だ。そして同時代経済力を失ってきたのが、日本だった。今その逆回転が始まっている。その流れは止まらないだろう。デフレ経済に陥った中国、少子高齢化の中国に成長は期待できない。
実利主主義のトランプ政権は中国、ロシアとの宥和政策を薦めるだろう。日本は新たなサプライチェーンを欧州とともに作り上げる時期に来ている。
【米国例外主義は続く】
今、貿易戦争のダメージは和らいだ。26年初めにかけ景気が減速しても26年の実質経済成長は2.7%程度とみるが、景気後退は避けられそうだ。特に米国の強さが目立つ「米国例外主義」は26年も続くだろう。AIブームはハイテク分野への投資を促進し、個人消費を刺激する。高関税の影響を相殺し、成長をけん引するのは間違いない。
米国は労働生産性や開業率が高く、少子高齢化も日本や欧州ほど深刻ではない。26年の米国の成長率は2.4%程度と予想、AIブームの恩恵で高関税の打撃を相殺できるのはトランプ氏にとって幸運と言えるかもしれない。
一方、中国以外の国は様々な問題を抱える。特に中国は過剰生産性や少子高齢化に悩み、輸出・投資主導型の成長への転換は進みにくい。26年の実質成長率は中国が4.5%、ユーロ圏と英国が0.9%程度とみる。日本は潜在成長率に近い0.6%程度とみる。
世界経済を見ていくうえで注目すべきポイントが3つある。第1に、国際秩序の変化。トランプ氏の高関税で貿易の比率が低下する。グローバル化が加速した1990年代から2000年代初頭までとは異なる環境に置かれる。
激しい覇権争いを演じる米国と中国のデカップリングの状態までには至らなくても、両国の分断は避けられない。その結果、輸出の技術移転が停滞し世界的な生産性の低下や成長の鈍化を招く恐れがある。デフレ経済の中国にとってさらに厳しい環境を覚悟する必要があるのでは。対日批判のあれこれは中国の焦りなのかもしれない。