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2025年07月14日

【Weekly No.492】トランプ関税に市場は楽観、警戒が必要

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  1. 【トランプ関税に市場は楽観、警戒が必要
  2. 【6月のFOMC議事要旨、金利見通しに開き-関税の影響巡って見解相違絵】
  3. 【25%関税と参院選結果予想で利上げ後退?】
  4. 【トランプ関税政策が分散投資促す】

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Weekly 714

【トランプ関税に市場は楽観、警戒が必要】

トランプ米大統領が7日に日本からの輸入品に対し25%の関税を課すと表明したことでドルは対円で上昇しており、市場では関税措置を巡る動向が引き続き注目されている。

日本は輸出依存度が高く、米国の主要貿易相手国・地域の中で合意から遠い状況にあることで、円はこのところ大きく売り込まれている。こうした中、ベッセント財務長官が19日に大阪・関西万博を訪れると発表。同氏が訪日中に当局者と会談を行うかは 現時点で明らかになっていないが、一段の協議に道が開かれる可能性があると市場は見ている。

米労働省が10日発表した4日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は5000件減の22.7万件と、7週間ぶりの低水準となった。予想外に減少し、企業がレイオフを控えている可能性を示唆し、FRB(連邦準備理事会)による利下げ再開の緊急性を生み出す状況には至っていないもよう。エコノミスト予想は23.5万件だった。

今週15日ころから、米大手銀行をはじめ企業決算の発表が本格化する。10日はデルタ航空が明るい需要見通しを示し、航空株が上昇した。テスラをはじめ大型ハイテク株に買いが入った。エヌビディアは時価総額が再び4兆ドルを上回った。エヌビディアのフアンCEOは予定している訪中の前に、トランプ米大統領と会談した。

トランプ米大統領は株式相場の上昇について、ウォール街が関税を支持している証拠だという。しかし投資家は、トランプ氏が最終的には関税方針を撤回すると読んでいるに過ぎない。一部では米市場の関税への警戒心が欠けていると指摘する声も聞かれ始めた。JP モルガンのダイモンCEOはアイルランドで開催されたイベントで、楽観的な市場への警告発言をしている。

米市場は関税に関して楽観的だが、8月1日までに関税の状況が明確になるチャンスはゼロだ。それが7月の利下げを不可能にしているとの見方が大半。関税政策が次々と先送りされる現実は、9月利下げのチャンスを低下させ、高金利の長期化につながり得ると同時に、景気減速の可能性を高めることになるという意見も米国内ではみられる。

 

【6月のFOMC議事要旨、金利見通しに開き-関税の影響巡って見解相違絵】

617-18日開催分のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録要旨が9日公表された。それによると、当局者の間で金利見通しに開きがあり、その主な要因は関税がインフレに与える影響についての見解の違いだった。

議事要旨には「数人の参加者は関税が一時的な物価上昇を引き起こすものの、より長期のインフレ期待には影響しないと指摘した。しかし大部分の参加者は、関税がより持続的な影響をインフレに与えるリスクがあると主張した」と記された。

FOMC会合後に発表された新たな金利見通しでは、19人の当局者のうち10人が年内に少なくとも2回の利下げがあると予想。7人の当局者は年内の利下げを全く予想せず、2人は1回の利下げを予想していた。

政策当局者は関税が潜在的に物価上昇に影響するタイミングや規模、期間について、「かなりの不確実性」があると指摘。関税が経済や通商交渉にどのような影響を与えるかによって、インフレへの影響に対する政策当局者の見方はさまざまだった。この時のFOMCでは4会合連続で政策金利を4.25-4.5%で維持することを全会一致で決定した。利下げを繰り返し要求してきたトランプ大統領からさらなる反発を招いたようだ。

急速に変化する経済政策が今年の金融政策判断を複雑化させた状況を、議事要旨は浮かび上がらせた。トランプ大統領は貿易相手国に対する関税の適用範囲を拡大する一方、税制、移民政策、規制改革などに関する政策変更を強行し、これらすべてが経済の不確実性を高めている。議事要旨は「参加者は通商政策やその他の政策、地政学的リスクの変化により、見通しに関する不確実性が高まっていると判断したが、全体的な不確実性は前回の会合以降、弱まっているとの見解を示した」と記述している。

なお、ほとんどのエコノミストは関税がインフレを押し上げ、経済成長を圧迫すると予想している。パウエルFRB議長は関税がなければ、今年、金利を引き下げていただろうと彼らは見ている。しかしこれまでの経済指標には関税による広範な影響は見られず、関税が最終的にいつ、どの程度、どのくらいの期間、物価を押し上げるのかについて、政策担当者の間で議論が分かれている。金融当局は15日に発表される6月のCPI(消費者物価指数)を注視する見通しだ。

 

【25%関税と参院選結果予想で利上げ後退?】

トランプ米大統領は7日、貿易相手国に新たな課税措置を通知し始めた。日本に対しては、8月1日から25%の関税を課す。4月に発表された24%から引き上げられた。「30%から35%」というシナリオも浮上していただけに最悪の事態は回避できた格好だ。  

ただ、これにより対米輸出金額は年間46兆円減少し、輸出企業の収益は最大で25%下押しされると想定されている。企業業績が悪化すれば、賃上げ機運のトーンダウンは避けがたい。自動車メーカーをはじめとした大手製造業の賃上げ動向は、非製造業の交渉にも波及する。2025年の春季労使交渉(春闘)では平均賃上げ率が5.25%だったが、来年は4%を割り込むことも想定される。

赤沢経済再生相があれだけ毎週訪米して交渉していたはずが、フタを開けてみれば関税25%と「ほぼゼロ回答かそれ以下」という結果で、市場には失望感がある。しかし、直後のシカゴの株価先物の下落は思ったほどではなく、市場は冷静に受け止めている印象だ。

関税発効が明日からではなく8月1日ということで、まだあと数週間あり、その間に何とかなればとの期待もあるのだろう。また4月と違って、今回は全世界が対象ではなく、主要国では日本と韓国くらいだということも、全面的なリスクオフ(投資家がリスクを回避する動き)となっていない一因とみられる。

今回の関税発表による影響があるのは、むしろ日銀の利上げシナリオの方だろう。関税一時停止の新たな期限が8月1日ということであれば、今月30-31日に開催される次の日銀会合の展望リポートでたいしたことが書けない。大方は、日銀の追加利上げ時期を10月と予想している。7月会合で何か新しい判断を出すことは不可能だろう。ただし、市場の日銀早期利上げ観測は後退せざるを得ず、一方で参院選を控えて財政悪化懸念を背景に超長期金利には上昇圧力がかかりやすいため、円金利の動きを予想するのは難しくなっている。

また、対日関税率の発表を受けて、外為市場では円安が進んでいる。これは、1)高関税が課されるため輸出が減少して貿易赤字が拡大する、2)日本企業が生産拠点を米国へ移管することを狙った直接投資が増える、3)企業収益圧迫による賃上げモメンタムの阻害が、日銀追加利上げの障害になる、といった点が要因として挙げられる。

日本では間もなく行われる参院選の結果次第で、連立交渉が必要となる可能性がある。今回の高関税率要求が、自公の過半数維持に逆風となるかもしれない。交渉の成り行きを見守ることしかできないが、しばらく円高に振れるような要因は見当たらない。円安圧力が続くかもしれない。

 

【トランプ関税政策が分散投資促す】

711日付けの日経新聞で「海外勢、熱なき日本株買い」という記事が見られた。4月以降14週連続の現物買いで、海外マネーが日本株に回帰しているという内容だ。それほど目立たないのは、投機が少なく、長期資金流入ということらしい。

同じく、米債券投資最大の運用会社PIMCOPacific Investment Management)が、米国発の貿易戦争が米資産への投資を見直す動きを引き起こす中、日本が世界の投資家にとって注目すべき投資先として浮上しているという見方を示した。PIMCOの日本代表が、ブルームバーグのインタビューで、日本の株式市場では「一世一代の構造改革が進行しており、債券市場も長年の金融緩和を経て金利上昇局面に入ったと指摘。こうした変化を受け、海外投資家の資金が日本に流入しているという。

代表はさらに、トランプ米大統領による政策発表は市場に「混乱」をもたらしており、直近の関税措置は「少なくとも分散投資を検討する必要性を浮き彫りにしている」と指摘した。

「日本はこれまで、世界の投資家にとって注目される投資先ではなかったが、現在は過去30年近くで最もダイナミックな局面にある」と語った。今や日本はグローバルな資産配分の運用者にとって、最優先で検討すべき投資先になっていると述べた。

トランプ氏による貿易戦争への世界的な反発が、米資産に代わる投資先を探る動きを加速させ、大規模な債券・株式市場を持つ日本が有望視されるようになったようだ。

日本の公式統計によれば、グローバルファンドは4月に日本の株式・債券を過去最高となる計9兆1600億円相当買い越し、その後も日本資産買いが続いている。

おそらく、日本の運用者や証券会社、そして投資家はこうした発言や事象に気が付いていないかもしれない。まあ、彼らが追随するころが株価の天井かもしれないが。