2025年06月23日
【Weekly No.489】トランプ大統領、イラン攻撃巡り今後2週間で決定へ
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- 【トランプ大統領、イラン攻撃巡り今後2週間で決定へ】
- 【中国とイランとの関係】
- 【原油100ドル突破も、市場は身構える】
- 【FOMC金利据え置く】
- 【トランプ氏支持層、イラン問題で深刻な亀裂 MAGA離反の恐れも】
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Weekly 6月23日
【トランプ大統領、イラン攻撃巡り今後2週間で決定へ】
トランプ米大統領はイランを攻撃するか2週間以内に決定を下すと、ホワイトハウスの報道官が19日、記者会見で述べた。イスラエルはイランの核関連施設への攻撃を拡大し、一連の攻撃がイランの政権崩壊につながる可能性があると警告している。
報道官はトランプ氏の声明を読み上げ、「近い将来、イランとの交渉が行われる可能性がかなりあることを踏まえ、今後2週間以内に実行するかどうかを決断する」と語った。
トランプ氏はここ数日、米国がイスラエルの対イラン攻撃に加わることで関与を深める可能性に公然と言及していた。今回の「2週間後」の発言は、テヘラン市民への避難呼びかけなどの強硬な発言や、カナダで開催されたG7(主要7カ国首脳会議)への出席を中断しワシントンに戻った行動に比べ、姿勢の後退を示唆するものだ。
この発言を受け、原油相場は上昇幅を縮小。株式先物は引き続き軟調だ。S&P500種株価指数先物は、奴隷解放記念日の祝日で薄商いの中、一時0.9%下落した。
トランプ氏はこれまでも2週間の期限を設けることが多く、実際に行動に移すこともあれば、そのまま立ち消えになることもあり、「2週間以内」というフレーズは政権1期目から判断保留を示す常とう句になっている。
関係者によると、米当局者は数日以内にイランに攻撃する可能性に備えている。関係者1人によると、複数の連邦機関の上層部も攻撃の準備を始めているという。
イスラエル側も、軍事攻撃を緩める兆しは見られない。19日未明にかけてイラン国内の数十カ所を戦闘機で攻撃。イラン西部アラクにある稼働していない原子炉も標的となった。
ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイスのジュネーブでイランのアラグチ外相と対面で協議を行った。欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表(外相)も出席。一方、ルビオ米国務長官はイタリアのタヤーニ外相と電話協議を行った。対話により中東での緊張緩和を目指す動きが20日の欧米の市場では投資家心理の悪化に歯止めをかけた。
【中国とイランとの関係】
一方、中国の対応はどうか。中国にとって、イランは単なる原油供給国以上の存在だ。イラン産原油を大幅な割引価格で輸入する恩恵を受けるだけでなく、2021年に締結した4000億ドル(約58兆円)の協定に基づき、イランへの戦略的なインフラ投資を増やしてきた。イランの体制が著しく弱体化または体制転換が起きた場合、中国は中東における重要な外交的影響力を失うことになる。
イランは中国にとってますます重要な原油供給国となっている。中国税関のデータによると、主要な積み替え拠点であるマレーシアから中国への原油輸送量は、2021年から3倍に増加し昨年は7000万トンに達した。これはロシア、サウジアラビアに次ぐ規模だ。
米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたところによると、イランは軍事力を増強するために、「数千トン規模の弾道ミサイルの原料」を中国に求めている。また、イラン、ロシア、中国の3か国は定期的に合同海軍演習を実施している。
イランでの紛争の激化は、中国が湾岸地域で抱く新たな野望にも悪影響を及ぼす恐れがある。わずか2年前、中国の外交官はイランとサウジアラビアの国交回復を仲介し、これは中東における摩擦解決の「新たなパラダイム」だと称賛していた。
イランは2023年に中国が主導する地域協力組織「上海協力機構(SCO)」に加盟している。ところが、創設メンバーであるインドは14日、イスラエルの攻撃を糾弾するSCOの声明に異例の反論を行った。この反論は、イスラエルとの関係を緊密化させているインドのモディ首相と習近平主席の間に潜在的な溝があることを浮き彫りにしている。
【原油100ドル突破も、市場は身構える】
イスラエルの対イラン攻撃に米国が加わるとの観測が、国際原油市場では取沙汰されており、市場関係者は、地政学的リスクプによる価格上乗せを迫られている。
バークレイズの原油アナリストによると、最悪のシナリオが市場に織り込まれていない。より大規模に衝突が拡大する最悪の展開になれば、原油価格は1バレル=100ドルを突破すると予想している。
アナリストとトレーダーを対象にブルームバーグが実施した調査によると、イスラエルがイランの核関連施設などを空爆し、イランが反撃する応酬が始まった先週末以降、北海原油代表油種ブレント先物は、バレル当たり8ドル程度の地政学的プレミアムを織り込んだ。
今回の衝突に米国が介入すれば、リスクに対する価格がさらに上積みされるが、正確にどの程度影響するかは、関与の性質に左右されると回答したのが9人いた。
米政府高官らが数日中のイラン攻撃の可能性に備えており、週末の攻撃プランを示唆する向きもあると先に伝えられた。ホワイトハウスの報道官は19日、トランプ大統領がイランを攻撃するかどうか2週間以内に決定すると明らかにした。
国際石油資本(メジャー)の英シェル(旧ロイヤル・ダッチ・シェル)のCEO(最高経営責任者)は19日、ペルシャ湾の重要な海上交通の要衝が封鎖された場合、「かなりの衝撃を招く恐れがある」と警告している。オプション市場もリスクを反映し始めた。コールオプション(買う権利)のプットオプション(売る権利)に対するプレミアムは、少なくとも2013年以降で最も大きくなっている。ウクライナ侵攻がロシアの原油生産途絶につながると懸念された22年も急拡大したが、今回のプレミアムはその当時を上回っている。なお、20日の北海ブレントは1.59ドル安の77.26ドルだった。
【FOMC金利据え置く】
FOMC(米連邦公開市場委員会)は17~18日に開催した定例会合で、主要政策金利を据え置くことを決定した。また年内2回の利下げを引き続き予想。経済の先行きを巡る不確実性は依然として高いものの、やや緩和されたとの認識を示した。政策金利の誘導目標は4.25-4.5%。今回の決定は全会一致だった。予測中央値によれば、2025年末時点でのインフレ率は3%(前回2.7%)に上方修正。経済成長率については1.4%(前回1.7%)に下方修正された。失業率については年末時点で4.5%と、前回予測からやや上向き。
パウエル議長は会合後の記者会見で、「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を待てる状況にある」と述べ、これまでと同様の見解を改めて示した。
年内2回の利下げを見込む予測に変化はなかったが、メンバーの何人かは予測を引き下げた。年内の利下げ回数をゼロと予想したのが7人。3月時点では4人だった。2人は今回、1回の利下げを予想している。
予測におけるこうした変化は、少なくとも25年における金利の方向性に関して、当局者間で見解の相違が広がっていることを示しているように見受けられる。この点について質問を受けたパウエル議長は、予測を重大視しない姿勢を示した。 経済の不確実性が高いことを踏まえ、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない」とパウエル氏は述べた。
会合後の声明には「景気見通しに関する不確実性は低下したが、依然として高い」と記された。ところが、20日、「早ければ7月利下げ」をいう理事もいた。FOMCメンバーであるウォラー理事は20日、CNBCのインタビューで、7月利下げの可能性を述べた。同理事は、「利下げの余地はあると考える。その後、インフレ動向を見極めていくことができる」と発言。中東での危機といったショックがあれば、必要に応じて利下げを一時停止する可能性があると付け加えた。次回のFOMC(連邦公開市場委員会)は7月29、30日の両日に開催される。
18日の声明の発表後、この日のドル指数と米国債利回りは一時下げを拡大。その後ドル指数は上げに転じ、10年債利回りも小幅高となった。S&P500株価指数はしばらく堅調を維持したが、パウエル議長の会見中に失速し、終盤は上げ下げを繰り返した。結局、米株価は小幅安で終わった。
【トランプ氏支持層、イラン問題で深刻な亀裂 MAGA離反の恐れも】
6月18日、米国がイランへの軍事攻撃に動くべきかどうかを巡り、トランプ大統領の支持層に深刻な亀裂が生じ始めたと、ロイターが報じている。ロイターによると、米国がイランへの軍事攻撃に動くべきかどうかを巡り、トランプ大統領の支持層に深刻な亀裂が生じ始めたそうだ。これまでトランプ氏を強力に応援してきた米国第一主義運動「MAGA」(米国を再び偉大に、Make America great again)推進派の中から、イランに対する軍事介入に猛反対する声が出てきているからだ。
MAGA推進派の有力者の1人でトランプ氏元側近のスティーブ・バノン氏は18日、外交交渉もなく米軍がイスラエルに合流してイランの核開発プログラムを壊滅させようとするべきではないと警告。同氏は記者団に「米国を引き裂くことになる。イラク(戦争の)二の舞をやってはいけない」と語った。
共和党内の反介入派の間でも、トランプ氏が外交的解決から大型の地下貫通特殊爆弾(バンカーバスター)使用を含めた軍事介入へと急速に軸足を移しつつある状況に警戒感が生まれている。そうした事態になると、トランプ氏はMAGA推進派の離反という事態に直面するとみる向きが多い。MAGA推進派は現在もトランプ氏の重要な支持基盤であるのは間違いない。
その支持基盤が動揺すれば、トランプ氏の人気が後退し、2026年の議会中間選挙で共和党が上下両院の多数派を維持できなくなるかもしれない。
ペンス元副大統領の盟友で、第1次トランプ政権時に政府高官を務めたマーク・ショート氏は、イラン問題に関する共和党内の分断はかなり大きいと分析。ただトランプ氏支持層の大半は最終的に同氏についていくだろうと予想している。
前述のバノン氏は「イスラエルは自分たちで始めたことに自らけりを付ける必要がある」と切り捨て、トランプ氏は米軍の関与という考えにブレーキをかけなければならないと訴えた。別の有力なMAGA推進派である共和党のマージョリー・テーラー・グリーン下院議員も、イランへの軍事攻撃反対を唱えている。
グリーン氏は15日のSNSへの投稿で「米国はイスラエルとイランの戦争に全面的に関与すべきだと吹聴する向きは誰であれ、MAGAではない。われわれは外国の戦争にうんざりしている。全ての戦争に」と述べた。