2025年06月30日
【Weekly No.490】トランプ氏の「解放の日」関税発動まで10日あまり-各国が交渉急ぐ
※期間限定で、パスワード不要で全文お読み頂けます。
■■------------------------------------------------------------------------------------------------■■
- 【トランプ氏の「解放の日」関税発動まで10日あまり-各国が交渉急ぐ】
- 【日経平均4万円回復、米株過去最高値】
- 【パウエルFRB 議長の議会証言】
- 【FRB の他のメンバーは慎重姿勢】
- 【米半導体最大手エヌディビア株、過去最高値更新】
■■-----------------------------------------------------------------------------------------------■■
Weekly 6月30日
【トランプ氏の「解放の日」関税発動まで10日あまり-各国が交渉急ぐ】
トランプ米大統領が自ら設定した貿易協定締結の期限まで10日あまりに迫る中、主要貿易相手国・地域との交渉は山場を迎えている。一部の国では、関税引き上げを回避するための協定締結が難航している。交渉の行方は各国にとって極めて重要だ。トランプ氏は、大規模な関税措置を発表した4月2日を「解放の日」と呼んでいる。7月9日以降、協定を締結していない輸出国には、現行の10%関税にいわゆる「解放の日」が追加されることになる。
ベッセント財務長官は、米国にとって重要な貿易相手は18カ国・地域であることを改めて強調。このうち英国とはすでに合意に達しており、中国とも貿易枠組みで最終的な理解の取りまとめに至ったとして、「この2カ国は現時点では完了」との考えを示した。
その上で同氏は「重要な18のうち10-12と決着できれば、さらに20の重要な相手があるが、通商協議はレーバーデーまでに決着する可能性がある」と述べた。具体的な国名などは言及しなかった。今年のレーバーデーは9月1日となっている。
先に合意に至った英国には、10%の関税が維持され、英国が懸念していた25%の鉄鋼関税は未解決のままだ。一方、中国とは8月中旬までの交渉猶予を設ける方向で、暫定的な関税措置停止が続いている。
各国・地域との状況は以下の通りだ。欧州連合に対して、ブルームバーグによると、最善のシナリオは、7月初旬の期限を超えて協議を継続できるよう、欧州連合(EU)と米国が合意に達することだという。トランプ氏は先々週、EUとの協議について不満を示し、一方的な関税を課すとして協議を打ち切ると脅した。
インドとは、米国と双方とも期限前の暫定合意を目指しているが、特に農産品を巡って対立が続いている。米国は遺伝子組み換え作物の市場開放を求めており、インド側はこれを拒否。一方、インドは上乗せ関税や特定分野の関税の免除を求めている。
ベトナムには、ベトナム共産党のラム書記長は、政府関係者や経済界の代表らと共に米国を訪問し、トランプ氏との会談を目指し、米企業との追加合意を取りまとめる方針だ。
ベトナムはボーイングの航空機から農産物に至るまで、米製品の購入拡大を申し出ており、合意成立を後押ししたい考え。交渉担当者らは、関税を20-25%の範囲とする枠組み合意に近づいていると、ブルームバーグは伝えている。
さて、問題の日本とは、自動車関税が日米交渉の最大の障害となっている。石破茂首相とトランプ氏は主要7カ国首脳会議(G7サミット)で合意に至らず、これまでに3回の電話会談でも進展はなかった。現在、次回の交渉に向けた調整が進められている。米国は日本に対する関税を24%上乗せする方針を示しており、これは現在課されている自動車への25%、 鉄鋼・アルミニウムへの50%の関税に加わることになる。
韓国とは、米国の交渉は実質的な進展を見せていない。G7サミットで予定されていた李在明大統領とトランプ氏の会談は中東情勢の緊張により直前で中止された。韓国は25%の追加関税のリスクに直面している。
【日経平均4万円回復、米株過去最高値】
27日の日経平均は4万円を回復、5カ月ぶりの4万円台と報じられているが、これは1月7日の4万83円以来ということだが、実質的には24年7月19日以来とほぼ1年ぶりだった。米国株もS$P500 、ナスダックが過去最高値を更新。利下げ期待と米中が合意したことを好感。ラトニック米商務長官は米中が先月スイスのジュネーブで合意に達した枠組みについて、最終的な理解の取りまとめに至ったと述べた。また、計10に上る他の主要貿易相手国・地域とも、まもなく合意に達する可能性があることも明らかにしている。貿易協議の進展への期待が米株式市場をサポートしているようだ。
ただ、エコノミストからは、米中通商合意は最終決定に至ったもののリスクは残っているとの指摘も出ている。楽観的なシナリオは、現在の合意が緊張緩和への道を開くことだが、エコノミストは「現在の米中休戦を脱線させ、緊張の再燃につながる可能性のある要因は多数ある」と指摘。米国側は、中国がレアアースに関する約束を履行した後でなければ対中制裁措置を解除しないと表明している。これにより、履行を巡る対立のリスクが逆に高まっているという。
また、FRBの利下げへの期待も米株式市場をサポートしているようだ。 27日の取引開始前にミネアポリス連銀総裁の発言が伝わり、年内に利下げが2回行われる可能性が高く、最初の利下げは9月になる可能性があるとの見方を示した。短期金融市場でも9月と12月の2回の利下げがコンセンサスとなっているようだ。
さらに、同日5月のPCE統計(個人消費支出)が発表になったが、価格指数はコアが若干高かったももの、ほぼ予想範囲内となった。
【パウエルFRB 議長の議会証言】
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は24日、利下げを急がない姿勢を改めて示した。当局者らは、トランプ大統領による関税政策が経済に与える影響がより明確になるのを見極めようとしている。
パウエル氏はこの日、下院金融委員会の公聴会で証言。「関税の影響は、その最終的な水準など複数の要因に左右されるだろう」とし、「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ態勢が整っている」述べた。
下院金融委員会での冒頭証言後の質疑応答では、7月利下げの可能性について問われ、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになろう」と回答。その上で、「その時はいつか、特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」と付け加えた。
現在、FRBに利下げを求める政治圧力が強まっているが、トランプ米大統領は25日、FRBの次期議長候補は「3、4人」いると述べてパウエル氏への攻撃を再開した。貿易を巡る不透明感を高め、減税によって財政赤字を3兆ドル膨らませる上に、FRBとけんかするとは、投資家にとって三重のショックだ。これらがもたらす影響は、新型コロナ禍の余波以上に長引くかもしれない。
与党共和党議員らもトランプ氏の攻撃に加勢し、議会公聴会で証言したパウエル氏に利下げを迫った。パウエル氏は4.5%という現在の政策金利水準が景気抑制的であると認めているが、同時に利下げ圧力に抵抗すべき理由も十分にある。エコノミストの間では高関税と財政拡張によってインフレ率が上昇するとの予想でほぼ一致している。共和党は、パウエル氏が政治的な姿勢で金融政策を運営していると非難する。だが消費者のインフレ期待が急上昇している現在、FRBの政治からの独立性は最も重要だ。ただ、パウエル議長が自らの姿勢を貫くのは次第に難しくなっている。トランプ氏が任命したFRBボウマン副議長とウォラー理事が利下げを支持するようになったからだ。2人は6月のFOMC(連邦公開市場委員会)で金利据え置きに賛成していた。どうやら、彼らはトランプ氏が考える議長後任候補なのかもしれない。7月利下げの可能性は低そうだが、7月会合の投票結果はこれまでのような全会一致にならないかもしれない。
なお、ミネアポリス連銀総裁は27日の講演で、年内に2回の利下げがある公算が大きいとの見解を示し、1回目は9月になるかもしれないと述べた。ただ、関税がインフレに与える影響は遅れて表れる可能性があり、政策当局は柔軟な姿勢を保つべきだと警告した。
ホワイトハウスは、トランプ大統領がこの件に関して公に表明してきた発言に対し、コメントを控えた。トランプ大統領はこれまで、利下げを行わなかったパウエル議長を「愚か」と繰り返し非難し、6月6日には後任を「すぐに」指名すると表明したほか、今週には後任候補を「3人か4人」に絞り込んだと述べるなどしている。
トランプ大統領のFRBの金融政策に対する政治介入の意向は、米国の政策決定における誠実さと自立性、ひいては米ドルの準備通貨としての地位を高める上で良い方法ではないかもしれない。こうした見方の一部が米ドルに対する認識に浸透し、このところの米ドル売りにつながっているのではないだろうか。
【FRB の他のメンバーは慎重姿勢】
FOMC(米連邦公開市場委員会)の複数メンバーによる最近の発言からは、関税措置に伴う物価上昇が持続的なインフレに発展しないと確信するには、なお数カ月を要するとの見方が主流のようだ。
ラー理事とボウマン副議長は、インフレ抑制が保たれた場合、早ければ7月29-30日のFOMC会合での利下げにオープンになり得る姿勢を見せ、注目を集めた。
しかしその後、パウエルFRB議長をはじめ、では、他のメンバーの意見はどうであろうか。NY連銀のウィリアムズ総裁やSF連銀のデーリー総裁など、多くの政策当局者は7月利下げの見方に冷や水を浴びせている。
デーリー総裁は26日、ブルームバーグとのインタビューで「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整を開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」と語った。インフレは今年に入り、予想以上のペースで減速している。米個人消費支出(PCE)価格指数は4月に前年同月比で2.1%上昇し、中銀の目標である2%をわずかに上回る伸びにとどまった。また26日発表された失業保険の継続受給者数は2021年11月以来の高水準に増加。継続受給者数はここ1カ月半に大きく増加しており、失業状態が長期間続いている人が増えていることが示唆された。一方で新規失業保険申請件数(21日終了週)は減少した。
デーリー氏は労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られないと指摘した。この2人の当局者は次回のFOMC会合で利下げを支持する用意がないことを示唆した。さらにリッチモンド連銀総裁はニューヨーク・ビジネス経済協会(NYABE)主催のイベントで関税が物価に上向きの圧力をかけると予想。不確実性がなお非常に大きいことから、FOMCは政策金利を調整する前に見通しが一段と明確になるのを待つべきだとした。
バーキン元FRB 議長も「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない」と指摘。「現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるのを待つ時間がある」と語った。
【米半導体最大手エヌディビア株、過去最高値更新】
先週の日米株高は半導体関連が市場をけん引した。これは、25日の株式市場で、米半導体大手エヌビディア の株価が過去最高値を記録したからでもある。同社は5月に2-4月期の業績を発表し売り上げが過去最高を更新したことは記憶に新しい。ここにきて25日、同社株は4%超上昇し、154.31ドルで引けた。時価総額は3兆7600億ドルに達し、米マイクロソフトを抜いた。マイクロソフトの評価額は3兆6500億ドル。この背景には、アナリストが、同社は人工知能(AI)の「黄金の波」に乗ると予測したことがある。
このアナリスはリポートで「われわれは次世代AI導入の次の『黄金の波』に入っているとみられ、エヌビディアは予想を上回る需要のもう一つの重要な段階の最前線にある」と記述。目標価格を175ドルから250ドルに引き上げ、投資判断は「買い」を維持した。