2025年09月08日
【Weekly No.500】今月利下げを示唆する雇用統計
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- 【今月利下げを示唆する雇用統計】
- 【日本との貿易合意に大統領令に署名】
- 【9月は日米株の相場参加のタイミングとして有望か】
- 【米求人件数10か月ぶりの低水準、米国債利回り急低下】
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Weekly 9月8日
【今月利下げを示唆する雇用統計】
市場関係者が最も注目していた8月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は2.2万人増にとどまり、市場予想の7.5万人増を大幅に下回った。失業率は4.3%と、前月の4.2%から上昇し、約4年ぶりの高水準に達した。雇用の減速が鮮明となってきた。
エコノミストらは雇用の減速について、トランプ政権の関税措置のほか、大規模な不法移民取り締まりに伴う労働力人口の減少が要因と指摘する。季節的要因による可能性もある。8月の雇用者数は当初軟調となり、その後上方改定される傾向にある。それでも、過去3カ月間の雇用者数の伸びの平均は月間2.9万人と、昨年同時期の8.2万人を大きく下回る。
失業率は2021年以来の高水準に上昇。労働市場が本格的な悪化局面に差しかかっているとの懸念が強まった。同統計を受け、FOMC(連邦公開市場委員会)が16~17日の9月会合で利下げに踏み切ることが確実視されるようになった。
今週は各統計で労働市場の減速が相次いで示され(後述する求人件数など)、雇用統計がその決定打となった。市場の反応は、景気減速への懸念よりも利下げに焦点が当たっているようだ。
ウォール街の主要銀行の中で、これまでに9月の利下げを想定していなかったのはBofA(バンクオブアメリカ)だけだったが、年内に2回、9月と12月に金利を引き下げると予想を修正した。
雇用を巡る不透明感が強まれば、米経済を支える消費も減速するとの懸念につながった。企業の収益も伸び悩みかねず、米株の割高感が広がるなかで売りを誘ったとの声が聞かれた。主要な米株価指数が高値圏で推移するなか、利益を確定する売りが広がりやすかったようだ。
雇用統計の発表を受けて取引開始直後は、NYダウは上昇し、8月28日に付けた最高値4万5636ドルを上回る場面があった。結局、引けはNY ダウが220ドル安(0.48%安)、ナスダックは7ポイント安、S&P500 は0.32%安で終えた。10年債利回りは4.088%と前日の4.167%から大幅に低下。ドルは主要通貨に対し全面安。対円は一時146.83円までドルが売られ、NY外為市場の引けは147.38円(5日の東京市場では148.21円)。
【日本との貿易合意に大統領令に署名】
トランプ大統領は4日、日本との貿易合意を実施する大統領令に署名した。これにより、米国は自動車・同部品を含む大半の日本からの輸入品に対して最大15%の関税を課すことになる。
一律関税は従来の税率に15%が上乗せされており、7月の日米合意に沿わない措置が発動された。自動車関税も引き下げで合意したものの、実施時期が明確になっていなかった。
米関税措置の交渉役を務める赤沢亮正経済再生担当相が訪米中だったが、この大統領令は、トランプ政権による国・地域別の関税が既存の関税に上乗せされることを防ぐ措置となっている。
この15%の関税は、トランプ氏による数十の貿易相手国・地域への関税が発効した8月7日以降に出荷された大半の製品に対し、さかのぼって適用される。大統領令によれば、航空宇宙および自動車の輸入に対する措置は、今月4日から7日以内に発効する。
大統領令の発出によって自動車関税が15%、他の品目も15%以上にならないと確認できたことは、関税がどうなるか見通しが立たず悲観的な声が上がっていた日本としては安心できる材料だ。
とはいえ、自動車についてはもともと2.5%だった関税が15%になったということでもある。米国が保護主義的、保護貿易的になっていることを日本としては改めて考えなくてはいけない。
また、米国はインフレが進んでいるものの関税の影響によるインフレの進行が表面化するのはこれからだ。現在、米国内では関税に対して否定的な意見は多くなく、むしろ歳入が増えて歓迎する声すらある。つまり、たとえトランプ政権が代わったとしても、一連の追加関税は維持される可能性があるということだ。日本はこれが「ニューノーマル」(新常態)だという考えのもとに行動する必要が出てくる。
連邦控訴裁判所は8月、トランプ大統領の関税の大半が違法との判決を下した。関税を決める権限は議会にあり大統領は運営権限があるだけだ、という米国の法規に則った当然の判断だ。連邦最高裁はおそらくじっくりと協議するだろう。判断は来年6月ごろになるかもしれないと言われている。一部の専門家からは、連邦最高裁判事を保守派が占めているためトランプ大統領にとって有利な判決が出るとの見方も聞かれる。ただ、米国の保守派の判事は「法の原則」に忠実と言われている。保守派が多いからと言って判決を予見することは難しいかもしれない。
いずれにしても、日本企業としては現在の状況がしばらく続く可能性を考慮し、現実に耐えながら米国に頼らないネットワークの構築や企業戦略の変更など、柔軟に対応できる態勢を整える必要がある。
日本企業の4-6月の業績は想定ほど悪くない。TOPIXの12カ月先1株当たり利益(EPS)は、春先から各アナリストによる下方修正が続いてきたが、夏場以降、拡大し、足元では過去最高を更新してきている。為替は日銀短観の想定レートより円安で推移し、こちらも業績面でプラスだ。今回の大統領令への署名は、業績拡大の流れを後押しする材料になり、日本株の押し上げにつながる。
日経平均は、夏場の上昇を経た過熱感もあり、10月にかけては値固めが見込まれる。一方、10月後半からの中間決算発表では通期予想の上方修正が見込まれ、それを確認しながら年末にかけて4万5000円を試すのではないか。
【9月は日米株の相場参加のタイミングとして有望か】
月間で最もパフォーマンスが良いのが、ナスダック総合指数と日経平均株価が1月、S&P500は4月、2番目にパフォーマンスが良いのが12月、3番目が11月となっている。逆に最もパフォーマンスが悪いのが全ての指数で9月。過去70年間でパフォーマンスが最もいい1月の日経平均の平均月間騰落率は2.15%、12月は1.12%、11月は1.19%。逆に悪い9月は-0.47%だ。
同様に、ナスダックトS&P500は過去50年間で、1月が2.54%と1.07%。12月が1.48%と1.55%。9月は-0.85%と-0.73%と悪い。
米国では「Sell in May and go away, don‘t come back until St.Leger Day.(5月に売り抜けてセントレジャーまで戻ってくるな)」という有名な相場格言がある。セントレジャー・デーとは、毎年9月の第2土曜日にイギリスで行われる競馬の大レースで、この格言は9月まで戻ってくるなということだ。
5月から9月にかけてパフォーマンスが良くない要因として、米国では、個人の確定申告の税還付の資金流入が一巡することや、夏季休暇前のポジション調整などが、その理由として挙げられる。日本でも「夏枯れ相場」など様々な要因があげられるが、根拠のある明確な理由は見当たらない。
逆に9月に買うとその後12月、翌年1月に向けては良好なパフォーマンスが得られることが多かったことがわかる。セルインメイの格言の後半は「But remember to come back in September (ただし9月には市場に戻ってくることを忘れないように)」と続いている。
夏場から秋口にかけての株価下落は米国株にとっても、日本株にとっても相場参加のタイミングとして有望と言えるかもしれない。
【米求人件数10か月ぶりの低水準、米国債利回り急低下】
3日、米金利が急低下、10年債利回りは前日の2.26%から2.21%に、30年債利回りは4.96%殻。89%に低下した。金利の低下を招いたのは7月の米雇用動態調査だった。7月の米求人件数は718万件と2か月連続で少し、10カ月ぶりの低水準となった。7月は失業者1人に対する求人件の割合が0.99倍となり1倍を割り込んだ。1倍割れは21年4月のコロナウイルスの流行で失業者が急増して以来。これ除くと第1次トランプ政権下の18年2月以来ということになる。同指標は3年前に2倍を超え、尾ノ後は低下基調をたどり、この1年は1.0~1.1倍で推移していた。1倍割れは失業者全員をカバーできず、労働需要が細ってきたことを意味する。数米政権の政策に不透明感が広がる中で、労働需要が徐々に低下していることを示す他のデータと整合する。
求人の減少はヘルスケアと小売り、娯楽・ホスピタリティーで顕著だった。ヘルスケア・社会福祉と州・地方政府の2分野に集中しているようだ。ヘルスケアや州政府の2つの分野は景気循環に左右されにくい市場であってこれまでの雇用増を率いてきただけに、この減少は注目に値する。このような分野が落ち込めば、雇用者の伸びをプラスで維持するような他の分野は、ほぼ残っていないことになる。
どうやら雇用主がトランプ政権の貿易政策が経済に与える打撃を見極めつつ、雇用に慎重になり、採用基準を厳しくしている状況が浮かび上がった。求人件数の減少だけでなく、雇用のペースも減速し、失業者が再就職するまでの期間が長期化している。
FRB(連邦準備制度理事会)は労働市場軟化の兆しを警戒し、関連データを注視している。パウエル議長は8月下旬の講演で「雇用に対する下振れリスクが高まっている」と指摘。今月のFOMC(連邦公開市場委員会)(16から17日に開催)では0.25ポイントの利下げが決定すると投資家は想定している。