2025年09月01日
【Weekly No.499】エヌビディア好決算も米中対立がリスク
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- 【エヌビディア好決算も米中対立がリスク】
- 【FRB 理事の解任は中央銀行の信認を損なう】
- 【日本株には中小型株に入り始めた海外資金】
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Weekly 9月1日
【エヌビディア好決算も米中対立がリスク】
世界が注目していた 米半導体大手エヌビディアの5-7月まで決算が27日(日本時間28日午前5時ころ)発表された。売上高が前年同期比56%増の467億ドルになったと発表した。データセンター部門の売上高は411億ドルに増加したが、アナリスト予想をわずかに下回った。同社は、今四半期(8-10月)の売上高をアナリスト予想の538億ドルを上回る540億ドルと予想している。
先進的な同社のチップは人口知能(AI)に不可欠であり、より効率的に処理できればできるほど、オープンAIやアンソロピックのようなモデルはより優れ、より安価になる。そのため、27日に発表された前年比56%増の売上高470億ドルを含む好調な決算は必然だった。結局のところ、ハイテク業界の巨人がAIに支出するなら、それはエヌビディアに支出するということだ。
新しいAIモデルを詳述する技術論文では、エヌビディアの製品がベンチマークとなっている。イーロン・マスク氏のような経営者が巨大なコンピューティングハブの構築について語る際、彼はそれを同社のチップ「H100」の倍数で測る。
これで莫大な収益につながらないわけはない。エヌビディアの売上総利益率は約73%で、AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、米半導体大手)といったライバルを上回っている。
トランプ政権は4月、「H20」と名付けられた中国向けチップの販売を一時禁止した。同社は以前、この四半期で80億ドルの売上が失われるとしていた。その通り、27日発表の決算における唯一の汚点は、AIブームの中核であるデータセンターの売上が予想を下回ったことだ。
それにもかかわらず、H20 の売り上げがないことを織り込みつつも、エヌビディアの次四半期の予想はアナリスト予想を上回った。メディア報道によれば、中国当局は国内企業に対し、ファーウェイなど地元企業から調達するよう促している。地政学的な問題が収まったとしても、エヌビディアは今後3カ月間の中国向けチップの売上高を最大50億ドルと予想しており、これは以前示唆していた水準を大きく下回る。
エヌビディアのCEO(最高経営責任者)は、中国のAI 業界は年間50%成長するとして500億ドルのビジネスチャンスと見積もっている。しかしリスクは、世界2大経済大国である米中が離れると、エヌビディアとAIはもはやそれほど密接な関係ではなくなるということだ。ファーウェイなどの競合製品がまだ同等でないとしても、一定の研究努力が代替チップやソフトウエアの開発に費やされることになる。人間の知性は依然として重要であり、それらの進歩を失う代償を計算するのは難しい。
見通しは予想を上回ったものの、同社の好決算に慣れきった投資家には響かず、株価は27日、米株式市場の引け後の時間外取引で約2.6%下落した。エヌビディアの時価総額は4兆4000億ドルから約1100億ドル減少。
過去にも同社決算は株価の急変動を生んだ。2四半期前の2月は同社株の下落率が8%を超えた。また、今月に入り28日までのS&P500 の8月月間の株価騰落率は2.3%高、同社の株価騰落率は1.5%安。米株式市場での、「AIラリー」は息切れ気味だ。マネーは出遅れ株に向かい始めている。脱AI株依存は昨年来の米株式市場のテーマだ。今年2月、中国の高性能AI、「ディープシーク」の登場で、一時分散投資の機運が高まったが結局は高成長のAI株への集中が再び強まった。エヌディビアの決算は今後も米株式市場全体のトレンドを変える転機になるかもしれない。少なくとも、今後のエヌディビア決算はマネーの一極集中の修正が本格的に進むかの分岐点になるだろう。
【FRB 理事の解任は中央銀行の信認を損なう】
トランプ大統領が25日、米国史上で初めてFRBのリサ・クック理事の解任を表明したことで、中央銀行の信認についてのリスクはもはや机上の話でなくなった。
2021年のインフレ高進に対しFRBの引き締め対応は遅れたと指摘されている。しかし当時のインフレ期待指標は物価が落ち着くとの見方を示していた。また米国債市場は利上げを開始するかなり前からそれを織り込み始めたため、引き締めは比較的容易に、コストをかけずにすんだ。FRBが7-8%のインフレ率を予測しても長期的なインフレ期待をほぼ完全に安定させ続けたのがどれだけ驚異的なことか我々は忘れてはならない。これは極めて強力な信認が必要なことだ。そのような信認は中央銀行の独立性や長年の強固な実績に依存し構築に長い時間を要するが崩れるのは簡単なことだた。
トランプ氏のクック氏解任表明について、政策決定や市場の織り込みにどの程度の時間を要するかは分からないが、FRBの信認低下の種がまかれてしまったことに間違いない。
有識者はだれもが、トランプ氏のクック理事の解任は、FRBの独立機関としての有効性、物価安定の使命を達成するための基盤に対する大規模な攻撃だになるとみている。FRB の信認が損なわれればFRBがインフレ期待を不安定化させないで雇用を最大化させるというもう1つの重要な責務を達成するのも難しくなるだろう。市場は金融政策が政治的な動機で決定されると考え、FRBが巨額の財政赤字の資金手当てなど政権のその他の目標により重きを置くとみなされるだろう。
トランプ氏は巨額の財政赤字の穴埋めするための資金調達コストが下がると考えて政策金利の引き下げを主張している。こうした考え方はもしも市場がインフレ抑制に対する信頼を失えば、米国債の利回りに大幅なインフレ・プレミアムを上乗せすることになり、全く失敗する可能性がある。
FRBは議会が1930年代に実施した一連の改革で現在の姿として確立されて以来、強い意志を持った大統領からその信認と独立性の回復力をこれほどまでに試されたのは初めてということになるのだ。
この仕組みの重要な特徴として、ワシントンを拠点とするFRB理事の14年間の任期、米政府の他の部分の連邦構造を反映した理事会と12の地区連邦準備銀行総裁の間の権限分担などがある。選挙で選ばれた政府高官らは選挙結果よりもデータや分析を優先した独立した専門家に比べて、時としてインフレ抑制に必要だが厳しくて不評を買うような決定がなかなかできないという考えに根ざしているのだ。
こうした仕組みはまたトランプ氏と大統領権限の拡張を掲げるトランプ政権の考え方に不満の種となってきた。トランプ氏は1月の大統領復帰以来、FRBに利下げを迫る試みに失敗しており、8月25日にクック氏が理事就任の前に組んだ住宅ローン2件を巡る不正疑惑を理由に「彼女を解任する根拠がある」と述べた。
クック氏はFRB理事に就任した初の黒人女性でもあり、支援者らは彼女の任期がバイデン前大統領指名の他の理事2人と同様に、トランプ氏の任期をはるかにしのぐ2038年まで続く。トランプ氏が26年5月のパウエル議長の任期終了後に新たなFRB議長を指名できても、少なくともトランプ氏が任期を迎える28年までは自らの任命者が理事会の過半を占めることはなさそうだ。
なお、29日発表された7月のPCE(個人消費支出)、インフレ調整後の実質個人消費支出は前月比0.3%増-財がけん引。PCEコア価格指数は前年同月比2.9%上昇-2月以降で最大の伸び。7月のPCE(個人消費支出)統計では、消費支出が4カ月で最大の伸びとなった。根強いインフレの中でも底堅い需要が続いていることが示唆された。
【日本株には中小型株に入り始めた海外資金】
海外投資家の間で日本株の人気が高まった近年でも見過ごされてきた中小型株がようやく脚光を浴び始めた。海外投資家は4月以降、現物日本株を6兆5000億円超買い越した。2023年4-6月期と24年1-3月期に次ぐ3回目の買いの波だ。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の商社株投資どに刺激された23年や、アジア勢による中国株からのシフトがあった24年は投資対象が大型株に偏り、大型株指数の上昇率が小型株を上回っていたが、今回は小型株が大型株を1.8%ポイントアウトパフォームしている。
日本株の上昇が3年目となり、ようやく長期資金が入ってきたようだ。以前のように日本株がブーム化しているのではなく、さまざまな国の投資家が少しずつ日本株のウエートを上げ始めているようだ。個別銘柄を選んで投資する資金の一部が中小型株にも入ってきた可能性がある。
中小型株の好調は世界的な傾向だ。米国では6月以降、小型株のラッセル2000指数がS&P500種株価指数を上回るパフォーマンスを上げており、欧州や韓国でも小型株は足元で堅調に推移している。
内需系企業が多い中小型株の場合、円高が輸入コスト低下や国内消費押し上げにつながり業績にプラスなことも投資家の買いを誘う。TOPIX小型株指数では構成銘柄の4-6月営業利益が前年同期比7.9%増えた。対照的に円高が打撃となる大型株のTOPIX100指数では5.8%減った。円は対ドルで前年同期比約7%上昇。日本銀行の利上げ継続が見込まれる中で円高に振れやすい。緩やかな円高局面では中小型株が強くなる傾向があり、今後3年程度はそうなるのではないか。